メディカルスタッフプログラム2(JDDW)
11月5日(土) 14:00–17:00 第10会場(ポートピアホテル本館 和楽)
MS2-基調講演2

増え続ける炎症性腸疾患患者―チーム医療の必要性―

横山 薫
北里大・消化器内科
【背景】慢性難治性の炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease; IBD)の代表的疾患として潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis; UC)とクローン病(Crohn’s disease; CD)が挙げられる.両疾患は厚生労働省の定める指定難病で医療費助成対象疾病となっている.医療受給者証交付数は年々増加し,平成26年度末でUC 17万人,CD 4万人を超え,世界的にも患者数の多い国の1つとなっている.
【診療の現状】IBDの患者数の増加とともに疾患の認知度は徐々に上がってきているが,消化器医の中でもIBDは特殊な疾患という意識があり,IBD専門医へ診察を依頼する傾向がみられる.エリア毎の専門施設へ患者は集中し,キャパシティーを超えている施設も少なくない.
【問題点】(1)IBD患者の年齢層の広さ.好発年齢は若~壮年であるが,就学前の小児や最近の高齢化社会に伴い高齢者患者も増加している.各年齢層特有の問題を考慮する必要があり,中でも就学,就労,結婚,妊娠・出産などは患者の人生に大きく関わる点である.また社会活動が活発な年代であり,社会的,心理的サポートも必須である.(2)IBD治療の変遷.本邦では2000年の血球成分吸着除去療法以後,種々の新規薬物療法が保険適用され,現在も複数の新薬の治験が進行中である.治療の選択肢が増える一方,治療法の適切な選択や副作用,食事・栄養療法も含めた全身管理など対処すべき事項も増えている.(3)全身疾患としてのIBD.IBDは消化管のみならず腸管外合併症の出現も多く見られ,複数科にわたり診察を受ける患者が多い.
【今後に向けて】増え続けるIBD患者に対してup to dateの専門知識を持ち診療,ケアにあたることが出来る多職種のメディカルスタッフの育成が急務と考え,日本炎症性腸疾患学会(Japanese Society for Inflammatory Bowel Disease; JSIBD) では2015年より教育セミナーの開催を開始している.IBD患者自らが治療に参加し,充足した日常生活を送れるよう,専門知識を有する多職種のメディカルスタッフが診療,ケアを分担,連携して行く必要がある.
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