メディカルスタッフプログラム1(JDDW)
11月5日(土) 9:00–12:00 第10会場(ポートピアホテル本館 和楽)
MS1-5

医療の効率が優先される中で,患者本位の緩和ケアは実現できるか

渡辺 千鶴
医療ライター
医療現場の取材を続ける中で,近年とくに気になっているのは医療ケアシステムを構築するうえで効率化が優先される余り,患者本位の医療が置き去りになってはいないかということです.“世界に冠たる”国民皆保険制度を守るため,そして“世界で初めて経験する”超高齢社会を乗り切るために,医療の質を確保しながら効率化を図っていくことは必要不可欠な対策です.しかし,その結果,医療機関の機能分担が進み,患者の言葉を借りて表現すれば「信頼していた病院に最後まで面倒をみてもらえない」状況が生まれています.
それは緩和ケアの世界でも決して例外ではありません.積極的ながん治療ができなくなり,主治医に緩和ケア専門病院(ホスピス)を勧められて移った家族が患者さんの死後,適切な緩和ケアが施されたにもかかわらず転院したことを後悔するといったことも起こっています.患者さんは急性期病院の主治医に「最後まで面倒をみてもらいたい」という希望を持っていたのに,家族はその願いを叶えてあげることができなかったからです.
医療機関を転々としてきた患者や家族を,最後にこのような思いにさせてしまうのは,まさに「チーム医療の敗北」ではないかと感じています.医療機関の機能分担が基本となる医療ケアシステムの中で,患者・家族が満足する緩和ケアを最初から最後まで提供するためには,高齢者医療同様,さまざまな職種による地域連携が欠かせません.今回はこうした観点から患者・家族,そして社会が望んでいる「緩和ケアをめぐるチーム医療のあり方」について考察を重ねてみたいと思います.同時に,医療の効率が優先される中,患者本位の緩和ケアを実現するために私たちメディアには何ができるのかその役割についても考えてみます.
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