【はじめに】侵襲の大きい食道癌手術に関して,我々はその周術期管理としてmodified ERAS protocol(mERAS)に基づく管理を行っている.mERASは「多職種の協力による周術期管理の工夫のパッケージ」であり多職種の協力を必要とする.体重減少を伴うことの多い食道癌では栄養管理が重要でありNST/管理栄養士の関わりは特に重要となるが,一方では院内各所での需要の高さからその貴重なリソースを当科のプロトコールだけに割くわけにはいかない状態であった.【NST/管理栄養士の役割】我々の食道mERASでは,初診時体重減少や栄養学的採血データの低下を伴う患者は「栄養サポート外来」を受診する.医師/NST/管理栄養士/薬剤師で構成されるこの外来にて必要栄養投与量やONSの追加が検討される.入院中にはNST回診が行われ,術前,退院時,退院後1,3,6か月の時点で栄養指導が行われ,シームレスな栄養管理を行ってきた.NST的に食道癌患者全員の回診はマンパワー的に問題があったが,次第に病棟薬剤師,NST病棟リンクナースから病棟看護師を含めた回診を行うことが可能となり,その後はNSTの別働隊として病棟看護師,病棟薬剤師,管理栄養士からなる「食道NST回診」が可能となり,現在では病棟カンファレンスに病棟薬剤師,管理栄養士が加わる形で食道NST回診と同じ業務が可能となった.またNST専門療法士教育施設認定をH19年に取得,食道外科mERAS管理での複数回栄養指導の開始,全科を対象に特別食開始時の栄養指導を開始し,それに伴い当センター全体の栄養指導数が増加し,管理栄養士の数も2.75→4.25→6.25人と増加,本年からは12人態勢となることになった.【結語】管理栄養士は多職種による食道癌周術期管理における栄養管理を担うと共に,その専門性を広く発揮し,多職種を繋ぐ役割を担うことが出来る.外科周術期管理に貴重な戦力である管理栄養士を有効活用した例としてその実際を報告する.また同時に活動と実績を積み上げることによりマンパワーの確保が可能となった経緯を紹介する. |