【目的】当院NSTは2005年より膵頭十二指腸切除術(PD)術後管理に参加,2010年よりERAS導入とともに周術期栄養管理パスを開始した.今回,PD周術期管理におけるパスの実際とNSTの役割を報告する.【栄養管理パス】術前,管理栄養士による栄養評価と術前1Wの栄養指導(免疫調整栄養剤内服)を行い,術前よりNSTが参加する.術前日絶食なし,OS1内服,麻酔導入2h前まで飲水可.POD1:飲水,経腸栄養(EN)開始.POD3:食事開始,術後1回栄養指導(開始時注意)を実施.術後食は3分(300kcal),5分(400kcal),全粥(600-800kcal),並食(1200kcal)で食上げする.食事+EN+静脈栄養(PPN)による栄養管理を行い,NST回診で必要・摂取量を評価,病態に応じた栄養療法を提案する(EN,PN調整).退院前に第2回栄養指導(在宅食生活)を実施して退院.【対象と方法】対象:2010.10-2016.11に経験したPD 119例.術前後の栄養指標,栄養摂取量評価,膵液瘻(PF),術後在院日数(LOS)について前期(2010-2013)61例,後期(2014-2016)58例で検討した.【結果】(前期/後期で栄養摂取量:平均値,その他:中央値で表示)疾患は膵癌48例,胆道癌40例,その他31例.術式はPPPD:53例,SSPPD:58例,標準PD:8例.空腸瘻造設あり.年齢71歳,性別は男60.5%.ERAS項目はEN開始1/1日,飲水1/1日,食事5/3日(<0.01),離床4/2日(<0.01),ドレン抜去7/5日(<0.01)であった.PF:19.7%/12.1%で有意差なし, LOS:31/21.5日(<0.01)と短縮した.栄養指標はAlb(g/dl)術前4.0/3.8(<0.01),術後4W:3.4/3.35, TTR(mg/dl)術前20.7/21.8, 術後4W:13.3/14.6で退院時正常未満.摂取総熱量(kcal)は術前1320/1576で免疫栄養剤内服良好,術後1W:1378/1123(<0.01),術後2W:1258/1157, 退院時1218/1237(充足率81.4/83.6%), 食事摂取量は術後1W:396/358,術後2W:730/699, 退院時1093/1004(充足率73/67.8%),BMI(術前/退院:全例)は21.9/20.7(<0.01)であった.【結語】PD-ERAS運用は多職種による多角的アプローチが有用でNSTが適任である.現在は入院期間のみ治療参加であるが,将来的には外来移行後も継続が望まれる. |