メディカルスタッフプログラム2(JDDW) |
10月14日 (土) 14:00 - 17:00 第7会場:福岡国際会議場 409+410 |
胃瘻適応者とその家族を取り巻く葛藤をスピリチュアルペインの観点から考える | |||
髙橋 美香子 | |||
鶴岡協立病院・消化器内科 | |||
胃瘻適応者(造設する方もしない方も)とその家族を取り巻く葛藤はスピリチュアルペインとしてとらえることができる.村田理論ではスピリチュアルペインは「時間性」「自立性」「関係性」の3つの柱で支えられた「自己」の喪失に伴う痛みとされ,いわば「魂の痛み」である. 時間性の喪失は疾病や食事が安全に摂れないことによる生命の危機である.自立性の喪失は己の食を経管栄養にゆだねなければならないことに対する抵抗感である.関係性の喪失は医療や介護の現場で個々人としてではなく病人として扱われてゆくことからくるものもあろう.これに対して,患者とその家族を支えるためにはそれぞれの柱を強めるための働きかけが求められる. 時間性の強化としては適切な食援助や経管栄養の併用による安定した栄養供給による栄養状態の改善維持があげられる.自立性の強化には積極的な身体・嚥下リハビリでがあり,それがかなわない場合も食支援の方法を自ら選択することで「自立性」ではなく「自律性」の柱へと発想を転換させることができる. 関係性の強化は特に大切である.もともと患者が持つコミュニティーを維持するだけではなく,新たな医療介護スタッフや同じ立場の方々との出会いを通じて新しい関係性を築くことが重要である.そのためには医療介護スタッフは個々人の歴史や価値観・感情に無関心であってはならない.そしてこの取り組みは対象者の病状や時期を問わず継続して可能である. 具体的取り組みとして,患者の生活歴聴取の欄とは別に,患者やその家族にかかわる様々な情報をスタッフがその都度記録し,スタッフ間で共有,ケアに活かせるようにしている.クラシックが好きな方はクラシックのBGMでリハビリに励み,看取りの場でもクラシックが流れていた.絵画の好きな方は病室で絵筆をとり,多くの作品を残してくれた.訪問に行くたびにハーモニカで1曲披露してくれる方もいる. 一期一会,職業を超えた人と人としての関係を紡ぐことでその方のQOLが向上するのではないだろうか. |
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索引用語 1:胃瘻 索引用語 2:spiritual pain |
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