我が国は,2025年には65歳以上の高齢者割合が全人口の30.3%になると推計されている.第3期がん対策基本計画の中にライフステージに応じたがん対策が掲げられ,「がんと認知症を併せ持つ高齢者が,住み慣れた地域や住まいで療養生活が送れるような医療・介護体制の整備を進める必要がある.」と言われている.今回の診療報酬改定において入院前支援が挙げられた.入院前に退院支援スクリーニングを行うと同時に治療を受けた後の生活がイメージできるような関わり,また意思決定を支援する上で多職種連携の強化をはかる必要がある.A病院は1182床(許可病床)を有する特定機能病院および地域がん診療連携拠点病院である.(平均在院日数13.2日)また,県南西部に位置する地域基幹病院であり,県下全域より患者搬送されている状況にある.地域完結型医療を目指し,地域に退院された後も在宅医療関係者との連携を継続している.演者は,2012年ベッドコントロールセンター開設に伴い退院調整看護師専従となり,2016年から退院支援加算1を算定している.2017年の消化器疾患入院患者件数は1939件であり,再入院件数は510件(26.3%)である.転帰先として自宅退院は1584件(81.8%)であり,その内退院前多職種カンファレンス開催は36件(2%)であった.退院支援看護師は退院支援スクリーニングシートで退院支援の必要性を抽出し,退院に関わる問題点,課題を明確化し,退院に向けた目標設定を行っている.病棟看護師と協働し必要な社会資源について予測しながら情報や問題点を共有し患者と関わっている.退院前・後訪問は在宅医療関係者とのカンファレンスの機会として,特に注力し取り組んでいる.高齢者の意思決定を尊重しながら,住み慣れた地域や住まいで安心した療養生活が送れるように在宅医療関係者とのネットワーク作りや地域との連携が課題である.今回,院内メディカルスタッフが積極的に地域に出ていき多職種連携が行われた事例を経験した.この事例を通して基幹病院として医療・看護・介護との連携の在り方や今後の課題について皆様と一緒に考えてみたい. |