内視鏡治療時の鎮静下内視鏡検査・治療の介助経験から,鎮静下の患者観察や急変対応など看護師の役割について考えてみたい. 当院ではESDやERCPなど治療内視鏡時,デクスメデトミジンを導入期と維持期に分け治療中持続投与を行い,体動がある場合は鎮静と鎮痛コントロールのためにミダゾラムとペンタジンを医師の指示で追加投与を行っている.治療中は心電図・動脈血酸素飽和度・血圧で呼吸と循環をモニタリングし患者状態の把握に努めている.鎮静のコントロール不良や過鎮静により呼吸回数の低下や酸素化の悪化,血圧の低下などから蘇生処置につながる事例もあり,救急カートの準備を常に行っている. 治療中の医師は内視鏡の操作中,患者の体動やうめき声など変化に気づき鎮静剤の追加投与の指示を行う.看護師は医師の指示により薬剤の投与を行うが持続的なモニタリングにより呼吸・循環動態の把握を行い,起こりうる危険性の予測や変化時の対応が必要となる.長時間になれば薬剤の副作用である呼吸抑制や循環動態の不安定化のため全身の安定化がさらに重要となってくる.日本消化器内視鏡学会第6回全国偶発症調査では,鎮静・鎮痛薬関連偶発症で,呼吸抑制,呼吸停止 が合わせて99例と最も多く,続く偶発症も低酸素血症の22例であり呼吸抑制に関わるものが多い. 救急外来・集中治療室での経験から,細かな患者の変化には敏感となっている.呼吸回数の変化,動脈血酸素飽和度,呼気終末期二酸化炭素濃度,血圧と脈拍,脈圧など繰り返し生理的評価を行う.また,鎮静度のスケールを用いて鎮静レベルの把握を行うなどアセスメント能力は養われていると考える. 内視鏡診療においてチームが共有するプロトコールを使用し,患者の生理的評価をしつつ薬剤投与を行うことが患者の苦痛を最小限に安全に治療を進めることができる.新しい看護師の役割として,薬剤投与と生理学的評価を専任で行えれば,医師は処置に集中できる環境が提供でき,急変時などでも冷静に迅速に対応ができるのではないかと考える. |