がん患者さんにとって就労維持は,経済的な面だけでなく治療を継続するための精神的な支柱となり,QOLを維持することにおいても極めて重要となる. 2012年第2期がん対策推進基本計画では,就労に関する相談をがん相談支援センターの業務に加えることが明記された. 当センターでは,仕事を持つがん患者さんへの支援体制を強化するため,2014年よりがん相談員向けの研修会を開始し,さらに,2016年よりハローワークの専門職である就労支援ナビゲーターとの連携体制を整えた.就労を主訴とした相談件数のうち,60%を超える患者さんが再就職を得たが,全相談件数に対する就労相談の割合は1割未満と少ない.就労支援体制が十分に知られていないことが要因と考えられるため,院内外への一層の周知が必要とであるとともに,診断時にスクリーニングを行うなど,患者さん自身が持っている就労に関する潜在的な不安に気づくシステムの構築が必要と考えられた. 再就職を得た場合であっても,職務開始後に離職するケースもある.この点については,社会保険労務士や産業保健総合支援センター等の院外の就職支援専門家との連携が不可欠であるため両立支援推進会議への積極的に参加し連携を強化する必要があると考えている. |