がんになっても安心して暮らせる社会を目指して,日本のがん対策において,がんサバイバーの就労支援のあり方が検討されてきました.2016年のがん対策基本法の改正では,事業主にも,がん患者の就労継続に配慮することが努力義務とされ,個人の問題として捉えがちだったがん患者の就労は,医療者,事業所との連携が不可欠となっています.2018年度の診療報酬改定では,療養・就労両立支援指導料および相談体制充実加算が新設され,医療機関と産業医,関係機関の連携によるがん患者の就労支援への期待が高まっています.その一方で,がん罹患をきっかけとした離職は減少していない現状があります.治療と就労の両立において,労働者であり,がん患者である本人を中心としたコミュニケーションをしっかり行い,医療機関と事業所の情報共有が課題となります.治療内容や副作用,後遺症など身体や機能の変化,心理社会的な側面,治療費など経済的側面など,先の見えない不安の中で判断できないがん患者と,どう配慮してよいかわからない事業主への「支援」と「配慮」に向けて,がん治療に関わる医療者が就労支援の観点を持って患者に関わり,事業所と医療機関が支援体制を構築が重要です.本セッションでは,厚生労働省「事業所における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」の「診断書兼意見書」「職場復帰支援プラン」の活用実際を交え,支援のあり方を考える機会にしたいと思います. |