がん患者は年々増加の一途を辿っており,3人に1人は就労可能年齢で罹患しているのが現状である.また,近年では治療が長期化することも多く,慢性疾患として「共生」が求められている.2017年のがん対策推進基本計画の中でも,「がん患者等の就労を含めた社会的な問題」に対し,医療機関等における就労支援の取り組むべき施策として全国のどの拠点病院等においてもより充実した就労相談支援を受けられるようにすることが望ましいとされており,その中で社会保険労務士等の院外の就労支援に関する専門家との連携についても明記されている.また,2018年のがん診療連携拠点病院等の整備に関する指針における相談支援センターの業務の中では「就労に関する相談」として産業保健センターや職業安定所等との効果的な連携による提供が望ましいと明記された. がん患者の就労にまつわる悩みは雇用形態によってもその内容は異なり,業務内容や通勤,職場の同僚や上司との人間関係,さらには家族との関係性など相談の内容は多岐にわたる.中でも職場環境においては,受け入れ側である職場の体制やそこでの人間関係も大きく関与しており,またその職場により対応が異なっているのが現状である. 当院では2013年度よりハローワークの「就職支援ナビゲーター」および社会保険労務士などの専門家との協働により,在職中・離職中双方の方々の支援が幅広く行えるような体制を取っている.その中において医療機関における支援だけでは成し得ない就労支援の在り方について日々実践している現状を踏まえ,状況に応じたより適切な専門家とそれぞれどのような連携が望ましいかなど,さまざまな立場の方との討議により広い視野で検討する機会としたい. |