2019年12月31日にWuhan Municipal Health Commission(武漢市衛生健康委員会)が原因不明の肺炎患者27人の疫学調査結果を公表し,その原因として2020年1月9日に新種のコロナウイルスが原因であると公表されてから,日を追うごとに患者の数は増加し,世界中に新型コロナウイルス(2019 nCoV)が蔓延している.世界の各所で,地域の医療システムに過負荷が生じ,一部地域では医療崩壊が現実のものとなった.VUCA(Volatility(変動性),Uncertainty(不確実性),Complexity(複雑性),Ambiguity(曖昧性))は,軍事用語がビジネス用語として用いられるようになった時代のキーワードであるが,新型コロナウイルス感染(COVID 19)との闘いを余儀なくされた医療現場そのものでもあった.そしてこれは,リアルな医療現場の極端な例に過ぎず,元々の医療の姿がVUCAそのものであることに他ならない.多くの制約の故に安全性の追求が必ずしも理想通りにいかず,制度上の不備も重なって解消困難な問題を多く生ずる現実の中で,これからの医療安全はどうあるべきか.医療安全元年から20年の節目となる新たなスタート地点で,医療安全のこれからの方向性の一つを示したい.本発表では,経営学の大家である ヘンリー・ミンツバーグ教授(カナダ・マギル大学)が提唱する「アート,サイエンス,クラフト*」の融合によるマネジメントを踏まえながら,医療安全における関与型マネジャーのあり方を概説する.* 『MBAが会社を滅ぼす マネジャーの正しい育て方』(日経BP, 2006) ・ アート :直観,感性,美意識,ビジョン,哲学・ サイエンス:分析,論理,データ・ クラフト :人材,経験則 |