山梨県は,日本列島中央付近に位置する小さな内陸県で,主に県央部の低地とこれを囲む3000mを超える山岳地形より成り立つ. さらに低地を横切る御坂山地により県庁所在地のある甲府盆地(国中)と富士山麓周辺(郡内)に分断されており,古くから物流・人的交流が妨げられ全く異なった風土・経済圏を形成している. 医療圏も同様で,搬送時間の長さから郡内からがん診療連携拠点病院・地域医療支援病院であり高度救命救急センターを有する当院への救急搬送はわずかであり医療格差が見られていた. 2012年ドクターヘリ運用開始後の病診連携の取り組みと変貌を検討した. 山梨県中央に位置する当院から郡内地方を含めた県内全域を20分でカバーすることが可能であるため,救急搬送数はH30年度で569件まで増加した.患者接触までの所要時間は平均15分(4~75),対象患者は疾病別:内因性237(42%)外傷性332(58%),重症度別:重症297(53%),中症172(30%),軽症100(17%) ,地域別:国中290例(51%),郡内260例(46%),県外19(3%)であったが,人口1万人当たりの搬送数は国中41.5人郡内217.6人と郡内での需要が著しく高い. また,ドクターヘリ導入後,郡内からの一般病診連携症例も増加しており,地道な地域連携を図っていくことも重要であるが,根本的な方法の転換により解決される問題もあると考える. また,今回県内・県外相互の救急搬送も見られ,将来の広域災害等も踏まえ県単位にとらわれない地域連携を検討することも重要であると考える.現在,飛行不能な状況,中近距離救命を補完すべくドクターカーを運用しておりその成果も含めて報告する. |