パネルディスカッション3(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会)
11月4日 14:00–17:00 第8会場(ポートピアホテル本館 偕楽1+2)
内PD3-4
潰瘍性大腸炎併発腫瘍の境界診断における拡大内視鏡の有用性 若手奨励賞
西尾 匡史1
共同演者:平澤 欣吾1, 前田 愼2
- 1
- 横浜市立大市民総合医療センター・内視鏡部
- 2
- 横浜市立大・消化器内科
【目的】近年,潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis; UC)患者の境界明瞭な腫瘍に対する内視鏡的切除(endoscopic resection; ER)が許容されるようになった.一方で,UC患者では通常内視鏡(conventional endoscopy; CE)で境界診断に難渋する例も多い.そこで,本研究ではUC併発腫瘍の境界診断における拡大内視鏡(magnifying endoscopy; ME)の有用性を検討した.
【方法】対象は2010~2020年に当院で切除されたUC炎症範囲内の腫瘍で,MEが施行された76症例100病変.CE・MEともに全周の80%以上で境界明瞭な病変をdistinct,80%未満の病変をindistinctとした.ER症例の短期・長期成績を評価し,境界診断におけるMEの有用性を検討した.
【成績】年齢中央値58歳,UC罹病期間中央値11.4年,腫瘍局在は右側/左側:27/73病変,腫瘍径中央値14mm,肉眼型はpolypoid/non-polypoid:47/53病変,優位Pit patternはI・II/III・IV/V:2/81/17病変,最終病理診断はAdenoma/LGD/HGD/粘膜下層浸潤癌:64/10/22/4病変であった.CEでdistinctであった66病変は全例MEでもdistinctであった(D/D群).CEでindistinctであった34病変中,22病変(65%)はMEでdistinct(ID/D群),12病変(35%)はindistinct(ID/ID群)であった.83病変(D/D群65病変,ID/D群18病変)がERで切除され,一括切除率97%,R0切除率92%で.D/D群とID/D群で有意差はなかった(97% vs. 91%, p=0.52; 91% vs. 94%, p=1.00).ESDで切除されたD/D群20病変,ID/D群16病変は全例で水平断端陰性かつ腫瘍はマーキング内に存在していた.ID/ID群は全例手術が施行された.ER後の観察期間中央値41か月で,局所再発は認めなかった.HGD・大腸癌の累積発生率は14.3%で,D/D群とID/D群で有意差はなかった(9.8% vs 38.9%, p=0.41)
【結論】境界不明瞭なUC併発腫瘍においてME併用で境界診断能が向上することが明らかになった.また,ERはMEで境界診断し得た病変に対しても許容されると考えられた.