デジタルポスターセッション内001(消化器内視鏡学会)
10月27日 14:00–14:51 第15会場(マリンメッセ福岡 アリーナ デジタルポスター会場)
内P-1

拡大内視鏡で観察される表在食道癌の血管新生メカニズム(アクセル・ブレーキ理論) 優秀演題賞

熊谷 洋一1
共同演者:立川 哲彦2, 石畝 亨1, 幡野 哲1, 豊増 嘉孝1, 松山 貴俊1, 持木 彫人1, 石田 秀行1
1
埼玉医大総合医療センター・消化管・一般外科
2
埼玉県立がんセンター・腫瘍診断・予防科
目的:拡大内視鏡で観察される表在食道癌の微細血管形態は壁深達度で大きく変化する.T1a-EP, LPM癌では上皮乳頭内毛細血管(IPCL)の拡張と上皮下毛細血管網(SECN)の増生が認められ,T1a-MM以深では新生血管が出現する.この変化のメカニズムを血管新生因子であるVEGF-Aと血管新生抑制因子であるChondromodulin-1 (ChM-1)を免疫染色することで考察する.対象と方法:T1a-EP, LPM19例,T1a-MM以深22例を用いVEGF-A, ChM-1を免疫染色した.拡大内視鏡所見をA群(JES分類:TypeA),B群(JES分類:TypeB1),C群(JES分類:TypeB2,B3)に分類し,免疫組織学的所見と比較した.CD-31染色より算出されるMicrovessel density(MVD)との比較も行った.結果:正常食道粘膜,T1a-EP, LPM,T1a-MM以深でのVEGF-A, ChM-1陽性率はVEGF-A: 0%, 52.6%, 90.9%,ChM-1: 48.5%, 73.7%, 23.8%であった.拡大内視鏡B群/C群における陽性率はVEGF-A: 70.7%/76.2%,ChM-1: 75.0%/19.0%であった.VEGF-A,ChM-1は発癌早期から陽性となるも,ChM-1はMM以深で急速に減弱した.これは同一病変内の上皮内伸展部と浸潤部の関係でも同様であった.CD31MVDは正常<T1a-EP, LPM<MM以深で有意に上昇していた(P<0.001).MVDは癌細胞のVEGF-A/ChM-1と有意な相関はなく(P=0.19 /0.68),間質の炎症細胞のVEGF-Aと有意な相関があった(P=0.04)結語:VEGF-Aは発癌早期から陽性となるが,T1a-EP,LPMではChM-1により作用が相殺されている.またChM-1には癌細胞増殖抑制効果も確認されておりT1a-MM以深になるとChM-1が減弱しVEGF-Aの作用が強調され浸潤が加速し血管形態が変化すると考えられる(アクセル, ブレーキ理論).これらの因子の発癌早期の変化は拡大内視鏡で観察される血管形態変化のメカニズムの一つとなり得る.
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