進行膵がんや胆道がんは,予後不良な悪性腫瘍であり,化学療法の奏効率は低く全生存期間は短い.また,適応薬剤も限られ,その多くが外来通院で治療を行っている.通院治療の場合は,生活環境や支援者の有無などの環境要因が治療継続に左右するため,情報収集が重要となる.また,病状進行等により生活の維持が困難となった場合は,Advance Care Planning(ACP)を進めて,今後の治療についての意向を明確にし,医療環境を整えていく必要がある.しかし,外来診療の時間は限られ,患者家族の希望などについて,話し合いの時間を十分確保することが難しいのが現状である.当院では,「診断時からの緩和ケアの提供」機能強化の一環として,専門看護師と認定看護師から構成される「がん看護サポートチーム」を設立した.これにより,専門看護師等が,医師の依頼を受けて,主治医や多職種と協働し,治療や療養環境に関する意思決定を支援する体制が整備された.看護師は,外来で患者や家族と面談を行い,これからの生活や医療を受けるにあたって大切にしたいことや医療者に知っておいて欲しいことなどを確認する.場合によっては,余命を知りたいか,通院が困難になった場合はどこで過ごしたいか,またそのようなことを誰と一緒に考えたいかなど,患者の意向を確認し,主治医と情報を共有する.今回は,がん看護サポートチームが介入した胆膵がん患者のうち,特に75歳以上の高齢者を対象として解析を行った.外来通院中に,抗がん剤治療を中止することを選択し,在宅療養などの環境調整を行った症例において,どのようにACPを進め,在宅療養環境の調整を行ったかをACPの視点から紹介する.そして,大学病院として,患者にとって最適ながん治療を提供するだけにとどまらず,切れ目なく医療ケアを提供するための取り組みにおいて大切なことや,地域医療や介護とシームレスに連携し在宅緩和医療へと橋渡しするために,高齢者がん患者とどのように向き合うかを考えるきっかけとしたい.