パネルディスカッション2(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会・消化器がん検診学会)
10月27日 9:00–12:00 第6会場(福岡国際会議場 203+204)
内PD2-7

大腸腫瘍に対するUnderwater EMRとUnderwater with Inject EMRの切除深度の比較

平井 悠一郎1
共同演者:豊嶋 直也1, 斎藤 豊1
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国立がん研究センター中央病院・内視鏡科
【目的】近年,大腸腫瘍に対するUnderwater EMR (UEMR)の有用性が多く報告され,従来のEMRに代わる治療法として期待されている.しかし,UEMRでは局注を省略することから切除深度が浅くなる可能性が懸念される.我々は,十分に深部切除マージンを確保する方法として,浸水下で粘膜下局注を併用するEMR (Underwater with Inject EMR; UIEMR)を考案し,UIEMRの切除深度を含めた治療成績を検討した.【方法】2018年1月から2021年12月までに当院でUEMRまたはUIEMRを施行した10-20mm大の大腸腫瘍を対象とした.有茎性病変,虫垂口にかかる病変や病理標本で剥離面の正確な評価が困難であった病変は除外した.後方視的に治療成績をUEMR群とUIEMR群で比較した.評価項目は病理標本における粘膜下層採取割合(粘膜下層が含まれている割合),切除深度(病変中心部の代表切片で測定した粘膜筋板下縁から深部断端までの最長距離),一括切除率,偶発症 (術中穿孔,遅発穿孔または後出血)発生率とした.【成績】UEMR群: 19症例23病変,UIEMR群:15症例18病変について解析した.平均腫瘍径はUIEMR群で有意に大きかった(UEMR群:15.5±4.7 mm, UIEMR群:18.6±4.7 mm, p=0.02).局在(右側結腸/左側結腸/直腸; UEMR群: 13/8/2, UIEMR群: 11/6/1),肉眼型(隆起型/平坦型; UEMR群: 3/20, UIEMR群: 6/12),病理診断(鋸歯状病変/腺腫/Tis癌/T1a癌; UEMR群: 12/8/2/1, UIEMR群: 10/5/3/0)では,両群間で有意差を認めなかった.粘膜下層採取割合はUEMR群: 95.7% (22/23), UIEMR群: 100% (18/18),p=N.S.であり,平均切除深度はUEMR群: 1070±615 μm, UIEMR群: 1786±1088 μm,p<0.05であった.一括切除率はUEMR群: 91.3% (21/23), UIEMR群: 94.4 % (17/18),偶発症はいずれの群でも認めなかった. 【結語】今回の遡及的検討では10-20mm大の大腸腫瘍に対するUIEMRはUEMRと比較し切除深度が深かった.UIEMRによりT1癌に対して十分な深部切除マージンの確保が期待でき,今後さらなる検証を予定している.
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