本邦におけるオンライン診療・遠隔診療は，夜間・休日の小児科診療などいくつかの限られた分野で試行されてきたものの，確立していなかった．これは患者のスマートフォンに対応するICTシステムの開発が進んでいなかったこと，保険診療での位置づけが定まっていなかったことが主な原因である．COVID-19の流行を契機に国から2020年4月には時限特例としてオンライン診療の制限緩和措置が出されたものの，まだどのような場合にオンライン診療を認めるかの議論が平行して進んでいる状態である．消化器領域は問診・視診などオンライン診療の得意とする方法だけでは診断，治療を的確に行うことの難しい分野であり，通常の対面診療との併用方法を現場の医療者で探っていく必要がある．オンライン診療の指針には遠隔手術も含まれているが，侵襲的医療行為であるため，その開始には安全性の観点から極めて慎重な準備が必要である．本セミナーではこうした問題点を浮き彫りにしながら今後のオンライン診療・遠隔診療の目指す姿を参加される皆様と議論してみたい．