多職種の専門的な医療者が緩和医療に関わる体制が整備されてきたが,がん薬物療法中の緩和医療・ケアにおける多職種連携では,主治医であるがん治療医の役割と責任は大きい.切除不能な消化器がんの主たる治療はがん薬物療法であり,その目的は治癒ではなく,がん増悪の制御による症状の緩和や生存期間の延長,生活の質(QOL)の維持・向上となる.個々の患者に応じた最善の治療を実施するためにShared decision making (SDM)という意思決定プロセスの重要性が認知され,実践されている.厳しい病状を伝える中で患者やその家族とともに緩和ケアの重要性を話し合い,身体的な苦痛だけでなく,精神的な苦痛や社会的な苦痛に関しても早めに認識して緩和医療・ケアを開始する機会が増えている.いわゆる「基本的な緩和ケア」を主治医であるがん治療医が速やかに実施し,緩和に難渋する場合には緩和ケア医を中心とするチームに相談し,社会的なサポートに関しては早期からソーシャルワーカー等の専門職と連携している.多職種による効果的な連携については,定期的な多職種カンファランス開催が有用と考える.ポイントとしては,治療目標と病状を確認し,参加者で緩和ケアの効果を評価し,よりよい治療を模索することが重要と考える.主治医や患者自身が改善の余地があることを認識していない場合もあり,多職種による検討は適切なタイミングでの専門職への依頼につながる場合が多い.SDMの実施により患者とともに将来を見据えた治療選択を行い,緩和医療・ケアの体制構築についても早めに検討されるようになっている.緩和ケアが実際に必要とされる前からの多職種連携も重要であり,多職種カンファランスであらかじめ検討することは効果的な緩和ケア・医療の提供に有用である.がん薬物療法は外来での通院治療がメインとなっており,短時間での適切な緩和ケア・医療の提供のためにも,事前にプランを作成することは重要である. |