病院薬剤部の役割は従来の調剤・調整といった所謂セントラル業務から入院・外来の診療支援業務と拡充が求められる状況にある.私個人は循環器内科をバックグラウンドとし臨床薬理学の診療・教育に従事していたが,2020年4月から薬剤部長として薬剤部業務に関与することとなった.4名の副薬剤部長(薬剤師)と共にCOVID-19 感染拡大の中で従来業務を維持しながら,年々増大する診療応需への対応,また当時急場の課題であったCOVID-19 重症者の診療支援,加えて職員・職域あるいは地域のワクチン接種にも貢献した.当院薬剤部はがん薬物療法を含めて注射供給・調整に注力してきたが,それら従来業務の質・量を保ちつつ,診療支援強化を最重要事項とし,一方で働き方改革等で業務時間内に業務をおさめるという両面の課題に取り組まねばならないこの時代,地域の調剤薬局と病院間での処方業務プトロコル締結,ハイスループットな調剤・アンプルディスペンサー導入等により負担軽減・効率化を図りつつ,業務負荷がかかる所へ時間レベルでスタッフを動的に配置することで実労働者数が限られる中で,対人業務充実化,各病棟における診療支援体制の強化を進めることが出来た.タスクシフト・タスクシェアと多職種が参画するチーム医療が進む中で,薬剤師の活躍の場はさらに広がり大きな期待が寄せられている.薬剤師は”くすり”の専門家としての診療全体を俯瞰出来ること,また医師の処方に対して疑義,さらに積極的に処方提案が出来る立場にあり,消化器診療においても外科・内視鏡手術等の周術期の術前・術後管理を含め薬剤部が今後も大きく貢献しうると考えられる.医師が薬剤部に勤務し,処方をする側・受ける側の両面を経験する中で認識したことは,各診療科医師の病院薬剤部に対する理解と協力が必須であるとともに,医師・薬剤師間を含め多職種連携強化の重要性である.今回の発表内容が各施設の日常診療の参考になれば幸いである. |