2002年に外来化学療法加算の算定が始まり22年が経過し,外来で化学療法を行うことが日常化した.消化器分野におけるがん薬物療法の治療の場も,既に外来が主流である. がん治療を外来で行うにあたって,患者は副作用が出現した時に自ら症状をアセスメントし,ケアすることが必要になる.看護師は,日常生活とがん治療の両立の目標を患者と共有し,患者自らがセルフケアをできるよう看護介入を行っている. がん薬物療法において,分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害剤が登場し,生存期間が延長した.後方治療の開発により副作用強度の弱いレジメンも選択可能となり,治療期間も延長している.いっぽう緩和ケアは,がんと診断された時から開始するとされており,日常臨床では担当医が治療と並行して緩和ケアを担っているのが現実である.当院でも緩和ケアチームが稼働中であるが,マンパワー不足のため全例での介入は非現実的で,介入依頼の有無や依頼時期の判断は主に担当医が行っており,チーム介入理由としてコントロール困難ながん性疼痛および身体的苦痛の緩和が多い.そのため担当医の治療でコントロールが良好と評価されている症例では,チームの介入が無いまま急激に患者の全身状態が悪化し,急いで療養場所の選択に迫られることなり,院内ではチームの介入にあたっての症例選択や適切な時期判断が課題となっている.療養場所の選択に際し,患者は急激な体調変化で意思決定が困難となり,家族も本人の意向を確認する機会がないまま,決断を迫られる.家族側への在宅ケアの情報提供不足,未知の体験への不安が,家族の選択を鈍らせる.準備不足のまま在宅医療が導入されても,往診医・訪問看護と信頼関係を築く時間もないままに看取りになってしまうと,在宅医療の満足度の低下が懸念される.このような混乱をさけるため,治療期の病院に勤務する看護師は,治療早期から患者の価値観・希望を引き出し,意思決定に取り組むサポートが必要と考える.当院での現状と課題を報告する. |