第88回日本消化器内視鏡学会総会 会長 屋嘉比 康治 (埼玉医大総合医療センター・消化器・肝臓内科) |
2014年10月に予定されております、第88回日本消化器内視鏡学会総会の会長を仰せつかり、大変に光栄であり会員の皆様には心より感謝申し上げます。非力ではありますが、学会当日まで全身全霊で準備してお迎えしたいと存じます。第88回総会は神戸での消化器関連学会週間(JDDW 2014)において行われますが、会場は神戸ポートピアホテルおよび国際展示場、国際会議場を使用して開催する予定です。四季の中でも勉学に最適な季節に六甲の山々と大阪湾に挟まれた国際都市の神戸にお出かけいただき、昼間は医学の進歩に触れて夜は国際色豊かな美味しい料理を堪能して明日の診療への大いなる糧を収穫していただきたいと念願しております。
ご存じのとおり、日本の消化器内視鏡はこれまで世界に大きく貢献してまいりました。消化器内視鏡に携わってきた多くの先達や現役の先生がたの献身的な努力と、優秀な機器メーカーとによって、早期の悪性腫瘍の発見を日常的なものとして、また、内視鏡を用いる切除による低侵襲治療や止血操作などのlife saving endoscopyを実現してきました。私が内視鏡検査に接した昭和50年代前半、当時は16mmフィルムを用いた外付けのカメラにて記録することが主体でありましたが、現在ではビデオスコープがどこの医療機関でも用いられ拡大内視鏡や特殊光内視鏡、レーザー内視鏡などにてこれまで発見できなかった微小がんまで診断し、ESDなどにて粘膜下のsm1までの早期がんであれば大きな広がりを持つ病変でも切除できる時代となっております。まさに隔世の感を感じる今日この頃です。しかし、この先端的な手技や技術も人である医師と人である患者さんの間で行われることであり、その意味から人と人の間を意味する「仁」の術であることを思い起こすとき、「仁術の内視鏡」の実現が重要と考えます。さらに、コンピューターを装備した最先端機器の進歩に浴することができる今日だからこそ、今まで内視鏡学の進歩を作り上げてこられた先達が所見の意味や治療の問題点を熟慮し悩んで解決してきたことを思うと、まさに機器の機能に頼りきるのではなく、「考える内視鏡」が重要と思われます。それらの意味から「仁術の内視鏡」、「考える内視鏡」を目標としてあげたいと思います。さらに日本において達成された先端的技術については、世界においてはまだ一部の国や地域のみで施行されるに留まっており、世界での評価はこれからです。国内においても大都市以外では、専門医不足のため、内視鏡学の進歩の恩恵を十分に受けていないのが現状と思われます。地域医療を発展させるためにも、内視鏡学の「教育」のあり方もきわめて重要な問題であります。今回の本学会においては、まず、今日までの内視鏡学の発展を広く普及するためにより多くの先生にご参集いただき、明日からの診療と未来への発展に役立つ知見や理論の研鑽が行われ、生涯教育の観点から本学会の先生がたに寄与できることを願っております。また、医療の国際化が取り上げられる中、我が国はまさに内視鏡学において大いに世界に寄与できると確信いたしますので、本学会では内視鏡学の国際貢献をテーマとして企画を考えました。パイオニアとして世界で活躍されている先生のご講演や、インターナショナルシンポジウム、あるいはESDハンズオンセミナーも企画いたしました。世界からの友人に、日本の内視鏡学や技術をご紹介できるものと確信いたします。これから1年余ではありますが、学会当日までしっかりと準備して、内容が充実した学会を目指して参ります。どうか多くの先生にご参加いただき、内視鏡学のアカデミックな4日間を楽しんでいただければ幸甚であります。